カテゴリー:ブログ 更新日時:2024年7月31日
配偶者が亡くなった場合、残された方は、自宅に住み続けられるかどうかという問題に直面します。
例えば、夫が単独で所有していた自宅の土地建物に夫婦で生活していたが、夫が亡くなったという場合に、妻が自宅に住み続けられるか、といったご相談をお受けすることがあります。
以下では、このケースについて解説いたします。
相続分について
まず、夫が亡くなった場合、その遺産は法定相続人に相続されます。
例えば、夫婦と子供2人の家族で夫が亡くなった場合、遺産は妻が2分の1、子供2人がそれぞれ4分の1ずつ相続します。この場合、夫名義の自宅も遺産に含まれるため、妻が自宅を取得するためには、遺産分割協議が必要となります。
遺産分割協議
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続きです。協議が成立すると、その内容に基づいて遺産が分割されます。自宅に関しては、以下のような分割方法があります。
1.妻が自宅を相続する
妻が自宅を相続し、他の相続人にはその価値に相当する他の遺産を分配する方法です。例えば、妻が自宅を相続し、子供たちには預貯金や有価証券を分けることが考えられます。
2.共有名義にする
妻と子供たちが共同で自宅を相続し、共有名義にする方法です。この場合、妻は引き続き自宅に住むことができますが、売却や賃貸などの処分には全員の同意が必要となります。
3.売却して分配する
自宅を売却し、その売却代金を相続人で分ける方法です。この場合、基本的には妻が自宅に住み続けることはできません。
居住権の保護
2020年4月1日から施行された「配偶者居住権」によって、夫の死亡時に妻が夫と共に自宅で生活していた場合に、配偶者の居住権が保護されるようになりました。この制度によれば、自宅は子が取得しつつ、妻が自宅での生活を続けることが可能になる場合があります。
配偶者居住権のみを取得する場合、自宅を取得する場合に比べて、金銭的な負担が少なくなります。
配偶者居住権には、長期と短期があります。
配偶者長期居住権
配偶者長期居住権を取得するためには、概要、
・相続人間で妻が居住権を取得することが合意されていること
・配偶者居住権が遺贈等されたこと
・裁判所が配偶者居住権の取得を認めたこと
のいずれかが満たされる必要があります。
配偶者長期居住権が認められた場合には、終身の間、自宅に住むことができます。
配偶者短期居住権
・遺産分割協議が成立した日から6か月が経過する日
・夫の死亡日から6か月が経過する日
のいずれか遅い日までの間は、自宅に無償で居住することができます。
ただし、妻が自宅の少なくとも一部を取得するか、上記の配偶者長期居住権を取得するか、いずれかの場合でなければ、配偶者短期居住権の期間を過ぎると自宅を明け渡す必要があります。
まとめ
配偶者が亡くなられた場合、残された方が自宅に住み続けるためには、遺産分割協議や配偶者居住権の設定など、法律に基づいた手続きが必要です。困ったときは、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士 大寺健太