ページ上部に戻る

メニュー

Aさんは、些細なトラブルがきっかけとなり、様々な行き違いも重なって、お父さんであるX氏と疎遠になっていました。AさんとX氏が疎遠となって数年してから、X氏が亡くなり、相続が開始しました。
亡X氏の相続人は、Aさんと、亡X氏のもとに頻繁に出入りしていた妹のBさんの2人だけであったところ、BさんがAさんを相手方として家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。
調停においてBさんが明らかにした亡X氏の遺産は、不動産(自宅)と数万円の預貯金だけでした。
Aさんは、亡X氏の預貯金残高が余りに少ないことを不審に思い、弁護士に相談に来られました。
Aさんの依頼を受けた担当弁護士は、Bさんが亡X氏の生前に預貯金を引き出した可能性が高いと考え、心当たりのある全ての金融機関に対して調査、照会を行いました。その結果、亡X氏が亡くなった当日から死亡後2、3日にかけて、多額の預貯金を何者かによって引き出されていることが分かりました。
さらに担当弁護士が調査を進めると、預貯金の引き出しは亡X氏の代理人と称するBさんによって行われていたこと、その際、既に亡くなっていたX氏の委任状を偽造して提出していたこと、預貯金を引き出す理由として「父(亡X氏)の財産を自分が管理する必要が生じたため。」と金融機関に虚偽の説明を行っていたこと、預貯金の一部がBさん名義の口座に送金されていることなどが分かりました。
担当弁護士は、Bさんが勝手に引き出したお金を速やかに取り戻す必要があると考え、Bさんに対し、預貯金を引き出した行為は極めて不適切な行為であることを指摘するとともに、速やかに引き出したお金の2分の1をAさんに返還するよう求めました。
当初、Bさんはお金の返還に難色を示しましたが、担当弁護士が説得を行ったところ、最終的には引き出したお金の2分の1をAさんに返還しました。
なお、預貯金の調査から亡X氏が株式投資を行っていたことも明らかになり、遺産として株式が存在することも判明し、以降、遺産分割調停では不動産と株式について話し合いが行われ、AさんとBさんの双方にとって納得のいく調停が成立しました。

コメント

本事案のように、亡くなった方の財産を生前管理していた一部の相続人が、生前または死亡直後に預貯金を引き出すことがあります。引き出されたお金の使途が不明である場合には、その相続人がお金を取り込もうとしていることがありますので、速やかにその返還を求める必要があります。

① 返還を求めるにあたっては、まず預貯金の取引履歴等を十分に調査する必要があります。
② また、弁護士の名前で返還請求を行うと、それだけで相手がお金を返してくることもあります。
③ 相手がお金の返還を拒んだ場合は、法的措置も辞さないことを告げたうえで相手を説得する必要がありますが、このときには脅迫や強要、恐喝にならないよう十分に配慮しなければなりません。
④ 相手がどうしても説得に応じないときには、やむを得ず、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求などの訴訟を提起する必要があります。
⑤ また、本事案のように、預貯金の調査を行う過程で、株式のような別の遺産の存在が判明することもあります。

このように、遺産が一部の相続人に取り込まれている疑いがある事案は、弁護士に依頼するメリットが大きいと考えられます。同様の事案でお困りの方は、とりあえず弁護士に相談されることをおすすめします。

一覧に戻る