遺産とは、被相続人が亡くなられた時点で保有している財産のことです。この財産には、プラスの財産(預貯金や不動産など)のほか、マイナスの財産(借金など)も含まれます。
相続というのは、この遺産を相続人の間で分け合うことですが、そもそも何が遺産か、どの財産を相続人の間で分け合うことになるのかが争いになる場合があります。
例えば、以下のような財産は、遺産かどうかが争われることがあります。
・ 生命保険
受取人が被相続人(亡くなられた方)となっている死亡保険金は、被相続人の財産ですから、遺産として相続人の間で分け合うことになります。
一方、受取人が相続人となっている死亡保険金は、基本的には相続財産になりません。このような保険金を受け取る権利は、受取人になっている相続人自身の権利だからです。ただし、遺産ではなくても相続税課税の対象になりうることには注意が必要です。
・ 年金や生活保護受給権
被相続人が受給していた老齢年金や生活保護の受給権は、被相続人固有の権利ですから、相続人が引き続き受給するということにはなりません。ただし、被相続人が亡くなった時点で既に発生していた年金(未支給年金)については、一定の手続をとることで、遺族が受け取ることができます。
・ 養育費や婚姻費用
養育費や婚姻費用の支払い義務についても、相続の対象とはなりません。したがって、例えば被相続人が養育費や婚姻費用を支払っていた場合に、被相続人の子は、相続放棄をしなくても、引き続き養育費を支払う義務を負うということはありません。反対に、被相続人が養育費や婚姻費用を受け取っていた場合に、相続人が引き続き養育費や婚姻費用を受け取るということはできません。